Chapter 4: Cambodia Trip









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翌日、再度Woman’s hope groupの元へ。今日からChannyは行商へ出掛けているので、代わりにChendaが対応してくれました。

Chendaにラフ画を元に早速型紙を作成し始めます。驚いたことに彼女の型紙の作成スピードは非常に早く、的確なものでした。

「これは独学で学んだの?」

こう聞くと彼女は答えました。

「2、3年はタイの職人の元で学んでいたけど、そこからは独学よ」

うーん、それにしても見事なスピードと精度・・

海外の連中、といっても無数にいるのであくまでMODECOとして関わった海外の人達に限りますが、彼らと会話したり、彼らの仕事の姿勢を見ていると日本との違いを感じる事が本当に良くあります。

彼らは【目的】を達成する事が最も重要だという事を理解しています。だから形なんかにこだわらないし、出来ない理由を探す事よりも出来る為にどうするかしか考えない。形式論から入りやすい日本との大きな違いです。

Chendaも多分に漏れず、形なんかに囚われません。定規なんかなくても厚紙のヘリを使えば直線は引ける、コンパスなんかなくてもマグカップを使えば円もアールも書ける、机なんかなくても地面が机になる・・物を作る時に大切なのは何よりも「作りたい、作り切るんだ」という強い想いだけ。それを本能で理解し、感情で動く彼らの姿は作り手として純粋そのもの。そして何より楽しんでいる。

日本の環境から見れば機材も器具もないこの場所は、恵まれた環境とは言い難いですし、何を作るにしてもそれを作る為のいわゆる条件が整っていない、と日本であれば多くの場合、そう判断されるでしょう。しかしそんな事はどうでも良い、と言わんばかりに作る事を楽しみ、技術を学び、出来ない事よりも出来る為にポジティブに悩み、機材や器具がなくても出来る事を一生懸命楽しみながら作るその姿は本当に見習うべきものがあると思います。

MODECOのアップサイクルも全く同じだったんですよね。

MODECOを立ち上げるより以前、廃材を触り始めた当初はあらゆる国内の工場や職人に散々断られてきました。だから自分で作れる事を実証し、それを職人に伝えて初めて一歩を踏めたもんです。その後一人の職人との出会いが劇的に変化をもたらしたわけで、当時務めていた営業職を終えた後、夜な夜な試行錯誤して共に作ってきた彼も実は外国人。彼もまた意欲的で、何よりいつでも作る事を楽しんでいた人で今なお尊敬する職人の一人です。

何であれ目的の為に出来る事を楽しみながら実践する、要は積極的な姿勢で臨む事と出来ない事を前提にし、更には挑戦をハナから拒絶する消極的な姿勢で臨むのとでは結果に差がつくのは当たり前。今のところ海外で出会う人達は皆ポジティブで、積極的な連中が多いので本当に
ご縁に感謝です。





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Chendaの隣に座って工程を見ながら、時に手伝いながら仕上げていく中でそんな事を思い返していました。彼女もまた挑戦者の一人です。だからこんな彼女達と一緒に何かこれからも挑戦出来たら良いな、と感じていました。今回の制作がその始まりになれば良いなと。

そんな事を考えている間にも作業は進行。無事にサンプルが出来上がりました。正直今回の渡航で何処まで進められるかまでは未知数だったので、ここまで進行出来た事が嬉しかったですし、何より初めて彼女達と作った作品が出来た事に喜びを感じたのを今でもはっきりと覚えています。





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Chendaは作業を終えた後にこう言いました。

「初めての事だらけで不安もあったけど楽しかったし、とても良い経験になったわ!」

屈託のない笑顔で答える彼女の言葉を聞き、私も本当に彼女達と一緒に作れて良かったと心の底から思いましたし、何より爛々と輝く眼差しはとても熱く、大きな刺激を受けました。

最後に彼女に聞きました。「今、一番やってみたい事は何?」

するとChendaは笑顔で答えます。
彼女の気持ちは常にこのグループに向いています。本当に真っ直ぐな人です。





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「日本に帰った後も必ず連絡するよ」

そう告げて仕上がったサンプルを手に、Woman’s hope groupを後にしました。

日本へ帰国後も彼女達とコミュニケーションを取り続けています。近い将来、彼女達と作り上げた作品がお披露目出来ると思います。お楽しみに・・!

Vol5へ続く